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17- D- 0190 201 7 年 6 月 8 日
総合重機各社の 17/ 3 期決算の
注目点
総合重機6 社(住友重機械工業(住友重機械)、三井造船、日立造船、三菱重工業(三菱重工)、川崎重工 業(川崎重工)、IHI)の 17/ 3 期決算および 18/ 3 期業績予想を踏まえ、株式会社日本格付研究所(J C R)の 現況に関する認識と格付上の注目点を整理した。
1.
業界動向
総合重機各社を取り巻く 17/ 3 期の事業環境は総じて厳しかった。船舶海洋分野では、過年度に新造船の 受注残高が積み上がったものの、ドル建て取引が主体である中、円高が収益の圧迫要因になった。また、足 元の受注環境は非常に厳しく、手持工事量の確保が再び課題になっている。新造船市場に存在する需給ギャ ップ(供給過多)という構造的な問題も依然として解消されていない。加えて、近年、各社が注力してきた 海洋資源開発関連も、原油安やブラジル国営石油会社ペトロブラスの汚職問題の影響を受け、事業環境は厳 しい。各社が高付加価値船に注力する中、工事採算の悪化なども相次ぎ、構造改革に向けた動きが加速した。
航空宇宙分野では民間航空機関連の好調が 16/ 3 期まで続き、同分野が総合重機大手の収益をけん引して きた。ただ、17/ 3 期は民間航空機関連の事業環境も厳しくなった。16/ 3 期まで継続してきた円安局面の転 換が収益の押し下げ要因の一つになった。また、17/ 3 期は新機種への切り替えに伴う影響も収益の圧迫要因 になった。ボーイング向けの分担生産品では主要な収益源である B777 向けがB777X へ移行する影響を受け たほか、新興国経済の減速や小型機への需要シフトなどを背景に B777 の減産ペースが早まった側面もある ようだ。一方、三菱重工が量産を目指す小型ジェット機 MRJ は、15 年 11 月に初飛行が実現したものの、量 産初号機の引き渡し予定が 18 年半ばから20 年半ばへ延期された。これにより、競合先であるエンブラエル に対する競争優位性がさらに希薄化する可能性がある上、受注キャンセルなどのリスクに一段の留意が必要 となった。
陸上分野の事業環境は斑模様であり、円高が総じてネガティブな要因になった。低迷していた建設機械関 連の需要が持ち直すなど一部に明るさが出てきたものの、霧が一斉に晴れた訳ではない。原油安の影響など を受けて、オイル&ガス関連分野の需要は総じて振るわなかったとみられる。
2.
決算動向
17/ 3 期の受注高は 6 社合計で 8. 6 兆円(前期比 9. 2%減)と 2 期連続で減少した。分野別では新造船・海 洋資源開発関連といった船舶海洋分野やエネルギープラント関連などの減少が目立った。一方、18/ 3 期の受 注高は円高影響の緩和もあり 6社合計で 9. 4兆円∼9.6 兆円と増加に転じる予想である。前期に減少した船 舶海洋分野やエネルギープラント関連などで増加が見込まれている。
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連は引き続き厳しい収益が継続するとみられる一方、工事採算悪化や円高による影響の緩和などが増益要因 になる見込みである。個社別では、6 社中 5 社が営業増益の予想である。
17/ 3 期末における6 社合計の財務構成は、自己資本比率が 29. 6%(前期末28. 4%)、DE Rが0. 64 倍(同 0. 70 倍)となった(有利子負債は社債・C P・借入金を対象)。財務構成は 16/ 3 期末において改善に停滞感が 生じたものの、これを一時的なものとし、改善傾向が維持された。アセットマネジメントなどの奏功もあり、 有利子負債が減少する一方、自己資本は積み上がった。個社別にみても、財務構成は改善あるいはおおむね 維持された。
3.
決算に
お
け
る
格付上の
注目点
17/ 3 期決算では、16/ 3 期に続き、受注管理・プロジェクト管理の甘さに起因する損失計上などが相次い だ。三井造船は海洋支援船の建造で追加損失を計上、また、海外プラントの工事で大幅な採算の悪化があっ た。三菱重工は L NG 船の建造でコスト悪化があった他、MRJ の開発費が増加した。MRJ では納入時期変更 に係る偶発債務の注記も付された。加えて、客船の建造に関して特別損失の追加計上があった。川崎重工は オフショア事業や海外L NG タンクで損失を計上した。IHI は、北米のプロセスプラントで工事採算の悪化が あった他、F - L NG 案件で追加コストの計上があった。
総合重機業界では、過去に長納期受注型事業で多額の損失を計上し、リスク管理・プロジェクト管理を強 化してきた経緯があるものの、依然として、こうした対応が十分ではないことを示唆する決算内容になって いる。各社が事業成長を志向する中で、十分な知見やノウハウを有しない事業領域に進出したことの弊害も 一部に出ている。上述したプロジェクトの中には既に終息した案件がある一方、多くのプロジェクトで工事 が進行中である。当該プロジェクトにおける追加損失の計上に加え、その他のプロジェクトにおける新たな 損失の発生についても一定の留意が必要と言える。J C R は、長納期受注型事業の受注時採算、コンティンジ ェンシーの織り込み度合い、リスク管理体制の整備状況などを引き続き確認していく。
なお、上述した特定プロジェクトの採算悪化は、船舶海洋分野において多く発生している。同分野では足 元の事業環境も厳しく、構造改革の取り組みが加速した。三菱重工は多額の特別損失計上の要因になった大 型客船の建造を今後見送ると発表。また、中手造船各社とのアライアンス協議を進めており、今治造船と名 村造船所とは基本合意に至ったとしている。川崎重工は社長をトップとした構造改革会議を設置し、事業の 継続性を含め今後の方針を検討した結果、商船建造の軸足を国内から中国にシフトし、国内商船建造の事業 規模を縮小する構造改革を実施することとなった。IHI は、F - L NG の生産設備を保有する愛知工場について、 受 注済 み案件 の完 工後、 生産 拠点 として の機 能を終 了さ せる ことを 決定 した。 これ に伴 い、 17/ 3 期に F -L NG・海洋構造物事業に係わる事業構造改革費用を特別損失に計上した。J C R は、船舶海洋分野におけるこ れら構造改革の詳細と効果をフォローしていく。また、足元における同分野の受注環境が厳しい中、採算に 目を配りながら、受注を計画通り獲得していけるかも課題となる。
一方、これまで大手各社の収益をけん引してきた民間航空機関連が 17/ 3期に変調をきたし、18/ 3期の収 益はさらに圧迫される見通しである。ボーイング向けの分担生産品では B777 向けの減産などが継続すると み ら れ る 。 ま た 、 エ ン ジ ン 関 連 で は 、 新 製 品 立 ち 上 げ 時 の 採 算 が 厳 し い 中 、 エ ア バ ス 向 け の V 2500 が PW1100G へ切り替わるスピードが加速する見込みである。各社の収益改善に向けた取り組みなどを通じて、 民間航空機関連の収益が今後、どのタイミングで反転するかが注目点の一つになる。
このように、総合重機各社を取り巻く 18/ 3期の経営環境には厳しさが残る。こうした中、18/ 3期の増益 予想を確実に実現できるか、また、収益・キャッシュフロー創出力の向上などを通じて、財務構成の改善ト レンドを維持できるか注目していく。なお、日立造船は財務体質の強化に向け、17 年 5 月に、資本性を有す る劣後ローンを調達している。
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(図表 1)各社の受注高と収益 (単位:億円)
受注高 売上高 営業利益
親会社株主に帰属
する当期純利益
住友重機械工業 (6302)
16/ 3 期 6, 859 7, 008 505 331
17/ 3 期 7, 111 6, 743 484 336
18/ 3 期(予想) 7, 200 7, 100 510 320
三井造船 (7003)
16/ 3 期 6, 096 8, 054 118 75
17/ 3 期 5, 165 7, 314 83 121
18/ 3 期(予想) 8, 000∼10, 000 7, 000 160 70
日立造船 (7004)
16/ 3 期 4, 354 3, 870 151 58
17/ 3 期 3, 989 3, 993 149 58
18/ 3 期(予想) 4, 000 3, 600 125 65
三菱重工業 (7011)
16/ 3 期 44, 855 40, 468 3, 095 638
17/ 3 期 42, 756 39, 140 1, 505 877
18/ 3 期(予想) 45, 000 41, 500 2, 300 1, 000
川崎重工業 (7012)
16/ 3 期 16, 936 15, 410 959 460
17/ 3 期 13, 487 15, 188 459 262
18/ 3 期(予想) 15, 600 15, 550 580 360
IHI (7013)
16/ 3 期 16, 053 15, 393 220 15
17/ 3 期 13, 898 14, 863 473 52
18/ 3 期(予想) 15, 000 15, 500 650 230
6 社合計
16/ 3 期 95, 155 90, 205 5, 050 1, 579
17/ 3 期 86, 409 87, 243 3, 155 1, 708
18/ 3 期(予想) 94, 800∼96, 800 90, 250 4, 325 2, 045
(出所:各社決算資料より J C R 作成)
(図表 2)各社の財務 (単位:億円、%)
自己資本 有利子負債 自己資本比率 DER
住友重機械工業
16/ 3 期末 3, 766 682 48. 1 0.18
17/ 3 期末 3, 986 604 50. 0 0.15
三井造船
16/ 3 期末 2, 347 2, 398 21. 5 1.02
17/ 3 期末 2, 503 2, 651 22. 8 1.06
日立造船
16/ 3 期末 1, 141 1, 040 28. 4 0.91
17/ 3 期末 1, 156 1, 074 29. 4 0.93
三菱重工業
16/ 3 期末 16, 797 10, 521 30. 6 0.63
17/ 3 期末 17, 827 9, 255 32. 5 0.52
川崎重工業
16/ 3 期末 4, 313 3, 967 26. 6 0.92
17/ 3 期末 4, 372 3, 989 25. 9 0.91
IHI
16/ 3 期末 3, 183 3, 566 18. 6 1.12
17/ 3 期末 3, 181 3, 516 18. 8 1.11
6 社合計
16/ 3 期末 31, 549 22, 176 28. 4 0.70
17/ 3 期末 33, 027 21, 091 29. 6 0.64
(注)有利子負債は社債・C P・借入金を対象(リース債務などは含まず) (出所:各社決算資料より J C R 作成)
【参考】
発行体:住友重機械工業株式会社
長期発行体格付:A 見通し:安定的
発行体:三井造船株式会社
長期発行体格付:BBB+ 見通し:安定的
発行体:日立造船株式会社
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発行体:三菱重工業株式会社
長期発行体格付:A A - 見通し:安定的
発行体:川崎重工業株式会社
長期発行体格付:A 見通し:安定的
発行体:株式会社 IHI
長期発行体格付:A - 見通し:安定的
■留意事項
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